2016年4月7日

マリー・アントワネット 絵で辿る生涯 72

牢屋から中庭に出た王妃。
王妃の処刑が決まったことを知った民衆は、朝早くから革命広場(現在のコンコルド広場)に集まります。コンシエルジュリーからその広場までの行程のひとつサントノレ通りも、群集が幾重にもなって待ち構えていました。

11時。狭い牢屋を出た王妃はコンシエルジュリーの中庭に出ます。そこには荷車が待っていました。それを目にしたマリー・アントワネットは、一瞬、驚いた様子を見せます。国王が革命広場に向うときには馬車だった、それなのに荷車とは。あまりの扱いに怒りをを感じたからかもしれません。

その表情も一瞬の内に消え、口を引き閉めた彼女は無言のまま粗末な荷車に乗ります。その隣りにジラール神父が座ります。ふたりの後には死刑執行人のサンソンと助手が立ちました。

11時15分。コンシエルジュリーの鉄門が開かれ、多数の兵に取り囲まれた王妃の荷車が外に出ます。そこには多くの人々がつめかけていましたが、誰も声を発することもなく、死に向うかつてのフランス王妃、マリー・アントワネットに見入ります。
じっと正面を向き、王妃ならではの態度を保っていたマリー・アントワネットは、驚くほど立派だった。群集はその姿に心を打たれ、言葉を失ったのでしょう。
処刑場へ向うマリー・アントワネットは、かつてのフランス王妃の威厳を
最後まで保っていました。