2013年1月4日

化学による歴史の謎解明

謎の頭部の持ち主
アンリ四世

アンリ四世のミイラ化した頭部を、長い時間をかけてDNA鑑定をおこない、確かに彼のものであることが判明し、
化学誌に正式な発表がありました。

革命が起きるまでは、パリ北郊外にあるサンドニ教会の王家の墓で静かに眠っていたアンリ4世でした。ところが革命の際に、王家に関する建造物はことごとく破壊され、サンドニ教会もそれから逃れることはできませんでした。

そればかりでなく、そこに葬られていた歴代の王家の人々の墓があばかれ、共同墓地に放り出されたり、川に流されたり。
中には遺体を売られた人もいたほど。

そうしたひとりがアンリ四世。
アンリ四世のミイラ化した頭部
フランス最後のブルボン王朝を築いたアンリ四世は名君の誉れ高い国王。
そうした意味で特別の価値を見い出したのか、王の頭部がいつの間にか盗まれ、何度か競売にかけられたのです。

頭部がアンリ四世のものに間違いないと主張していたのは、それを一時期保持していた古美術商。
彼は主張している間に世を去りましたが、今回化学のお陰でそれが立証され、無事にその頭部の主が判明。一番喜んでいるのは、自分の頭が見つかったアンリ四世自身でしょう。

いつまでも話題がつきない
ルイ16世

DNA鑑定に使用されたのは革命で処刑されたルイ16世の血。
処刑の際に血をハンカチに浸し、ひょうたんのフォルムの容器に保管していた人がいたのです。
イタリアの由緒ある貴族だそうで、ハンカチの血はルイ16世が処刑された1793年1月21日に処刑台で流したもの。時とともに血はほとんど蒸発し、ハンカチも紛失。ところが、容器の中にわずかばかりこびりついていたのです。
後日、その血は確かにルイ16世のものであることが判明し、
今回の鑑定に使用されたのです。
近代化学が歴史の謎を解いてくれたことは、ほんとうにすばらしい。


ルイ16世の血を含んだハンカチが
入っていたひょうたん形の容器
革命家の名がいくつかかかれています。

今回の鑑定でもうひとつわかったことは、
ルイ14世の父親が確かにルイ13世だということ。
アンリ四世の息子がルイ13世で、その息子がルイ14世、そしてその子孫がルイ16世。つまりアンリ四世からルイ16世までの血のつながりがあることが判ったということ。

何がそれほど重要かというと、実は、フランス最大の国王ルイ14世の父親はルイ13世ではなく、有力なマザランではないかという説が、長年にわたってくり返されていたから。つまり、王妃の愛人だった枢機卿であり実質上の宰相であったマザランの子供、と疑っていた歴史家も多くいたのです。

ところが今回の鑑定でその疑惑は晴れたわけです。
めでたしめでたし。

DNAはほんとうに便利。
今後もどんどん歴史の謎を解明してほしい。
でも、もしかしたら事実が判明して困る人もいるかも。
これはいつの時代も同じです。