2017年11月15日

メトロの駅名は語る 62

Pasteur
パストゥール(6、12号線)

細菌学者ルイ・パストゥールの名を冠した駅名で、近くには世界的な権威を誇るパストゥール研究所があります。

研究に励むルイ・パストゥール(1822-1895)
化学、生物学、医学などの幅広い研究で多くの発見をしたパストゥールは、ドイツのロベルト・コッホと並んで「近代細菌学の開祖」と称えられています。

パリの高等師範学校で
化学を専攻していた若いパストゥール。

パストゥールの名は、割と身近な食べ物にも見かけられます。
例えば、飲み物のミルクに、パスチャライゼーションと表示されています。

これは低温で加熱することによって、素材が持つ風味を損なうことなく体に害を与えないよう殺菌する方法。
これを考えついたのはパストゥールで、彼の名からパスチャライゼーションという言葉が生まれました。

その他ワクチンの開発にも絶大な貢献をなしました。そのひとつが狂犬病ワクチンです。
そのワクチンで初めて命を助けられたのが、9歳だったジョセフ・メイステル少年。1885年のことでした。それ以前は動物実験だけだったので、大きな危険を覚悟の上でした。

パストゥールから初めて
狂犬病ワクチンを受けて
一命を取り留めた少年ジョセフ・メイステル。
時が経ち、第二次世界大戦中、パストゥール研究所の門衛になっていたのは64歳のジョセフ・メイステルでした。パストゥールはその研究所の地下の礼拝堂に葬られていて、メイステルは大恩ある人を守りたかったのでしょう。

1940年、パリを占領したナチス・ドイツは、パストゥールの墓に荒々しい足音を響かせながら向かって行きます。

メイステルにとって聖域にも等しい礼拝堂を、敵に汚されたくないと必死になって食い止めようと試みます。ところが力及ばず、悲嘆にくれたメイステルは自殺します。

メイステルが自殺したのは礼拝堂の入り口という説と、自宅という説がありますが、子孫の証言によると自宅のようです。
パストゥール研究所の礼拝堂の地下に、
今でもルイ・パストゥールは葬られています。