2010年1月20日

シャトレのつぶやき5 毛皮ものがたり

 
旧年の末からとてもとても寒いパリ。気をつけていたけれど、ちょっとカゼ気味になって寝込んでしまいました。クシャミもひっきりなしに出たし。デモ、もう大丈夫、しっかり寝たから。

ひとりで寝ているのもつまらないから、
クリスマスプレゼントの私にそっくりな可愛いいネコちゃんと一緒に、フカフカのお布団に転がっていました。
そうしたらママンがナンと言ったと思う? 
「そんな安物の毛皮なんか着ているからカゼひくのよ」だって。自尊心を傷つけられるってこういうことよね。
安物だなんて言われたって、これしかないの。生まれたときからずっとこの毛皮一枚。
だから毎日ていねいになめて手入れをしているの。それも大変なことなのよ。
なにしろワタシの毛は長いでしょ。だから時間もかかるし、ときにはエビソリになることもあるの。ミンクの方が豪華でいいに決まっているけれど、世界がいくら広いといっても、ミンクを着ているネコなんて見たことないでしょ。

そうそう、毛皮といえば、スイスはネコにはとても恐い国なんだって。
2,3年前だけど、スイスでネコの毛皮を売っているってテレビで放送していたの。
それを知ってママンは
「なにがあってもスイスに一人で行ってはダメよ」
と言っていたけれど、なんだか平和な中立国スイスのイメージが狂ってしまうわネ。
最近では映画監督のロマン・ポランスキーが、
30年ほど前にアメリカで犯した罪のために国際手配されていて、
今までどの国でもナンともなかったのに、いきなりスイスで逮捕されたし。
ポランスキーはしばらくはプリゾンに入っていたけれど、
ものすごい保釈金を払ってそこからナンとか出て、
今はスイスにある自分の別荘でおとなしく暮らしているんだって。
でもスイスが彼のパスポートを没収したからどこにも行けないの。
その上、いつアメリカに引き渡されるかもしれないらしいの。
まるで、「レ・ミゼラブル」のジャン・ヴァルジャンを追う
ジャベル警部みたいにしつこいのね。

とにかく、安物であってもワタシの毛皮はワタシにとってとても大切。
ママンがナンて言っても変えないの。
夏の暑いときにはキッチンやバスルームのタイルの上に
転がって体をひやすの。
とってもいい気持ちよ。それを見てママンはまた言うの。
「この暑いのにどうして毛皮なんか着ているの。チャックをつけてあげるから脱いだらどうなの」
ほんとうに疲れる人。