2010年5月1日

スズラン祭

5月1日はフランスはスズラン祭の日。
その日は誰でも、どこでも、スズランを売っていいという日なのです。
しかもメーデーでもあるので休日。そのためにメトロの入り口にも、スーパーの入り口にも、エッフェル塔の前にも、路上にも、たくさんのにわかスズラン売りが立ち、あれこれ工夫を凝らしたスズランを売ります。
切花や鉢植え、バラやアイビーと組み合わせたブーケなどはクラシックな方で、最近はぬいぐるみやキティーちゃんも、スズランとその日だけのカップルになって売られたりしている。

チョコレート屋さんもまたまたアイディアの見せ所とばかりに、ウインドーを飾って人目をひく努力を発揮。それにしてもなんだかんだとチョコレートを食べる機会が増える一方で、本当にこわいわ。強い意志を持って食べなければいいとわかってはいるけれど、
チョコレートによる誘惑は成功度が高いのが事実。              
スズランは幸せを運ぶ花なので、自分が幸せになって欲しい人にプレゼントします。子供から母親に、夫から妻にというのがフランスでは定番。

この習慣が生まれたのは17世紀のフランス国王、シャルル9世の時代。彼はカトリーヌ・ド・メディシスの三番目の息子で「サン・バルテルミーの虐殺」で名を歴史に留めた人。「プロテスタントを殺せ、皆殺しにしろ」と叫び、それが国王の命令とばかりに、カトリックとプロテスタントの間に壮烈な戦いが繰り広げられたという事件。
陰惨な顔をしているし、極度に神経質で臆病で出来の悪い息子だったので、カトリーヌはずい分と手を焼いたようですが、その彼が1561年5月1日に幸福をもたらすスズランを宮廷の貴族たちにプレゼントし、この習慣が始まったというのですから、人は本当にわからない。

シャルル9世に関してもっと詳しく知りたい人は、私の苦心の著書のひとつ「息子を国王にした女たち」を読んでくださいね。

クリスチャン・ディオールが最も好きだったのもスズラン。
彼が亡くなったときには
棺にスズランをいっぱい入れて別れを告げたという感動的なお話もあります。
そういえば10年ほど前に、
靴の王者ロジェ・ヴィヴィエに東京で彼の展覧会開催を頼まれ、
いろいろと作品を集めたことがありました。
そのときに、イヴ・サンローランがコレクションしていた中に、
ヴィヴィエがディオールのために製作した靴があることを思い出し、
それを貸してもらえないか聞いたところ、快く承諾してくださり、
大感激したことがありました。
その靴にも愛らしいスズランの飾りがあったのです。
ああ、何てなつかしい思い出。
時は過ぎ、ディオールもヴィヴィエもサンローランも亡くなってしまったのね。

伝説では天国の入り口の両サイドにスズランが飾られ、
地上でおこないが良かった人がそこを通るときには、
チリンチリンと可愛らしい音を立てて迎えるということだけど、
こればかりは確かめようがない。
まあ、生きている間に、この地球でじっくりとその愛らしい姿を楽しみましょう。
ただしスズランは毒を持っているから、その点注意しなくては。
可愛いからといって安心出来ませんよ。人間の世界でも同じだけれど。