2011年1月24日

オート・クチュール

抵抗しがたいほどのエレガンス
 常にディオールと共に始まるオート・クチュール。
今回も同じ。会場はロダン美術館。
庭に大規模にテントをはっての
コレクション発表です。
これほど華やかな世界があるかと思うほどの顔ぶれ、そして、
もちろん、鬼才ジョン・ガリアーノによる可能な限りフェミニンな作品の数々。

クリスチャン・ディオールの無二の親友だったイラストレター、ルネ・グリュオーへのオマージュが今回のテーマ。
ディオールがメゾンを設立したときから、
常に彼の傍らで活躍していたグリュオー。
彼ほどディオールと密接な関係にあった人はいません。公私ともに一緒に時代を歩んできたふたりが、
もっとも輝いていたのは1950年代。

満開の花のような優しさを持つフェミニンな女性を、
布地で表現していたディオール。
それをガリアーノは現代性を
導入しつつ再現し、私たちをディオールとグリュオーの時代に誘い入れてくれました。
俗世間を完全に忘れさせ、たとえ短時間であったとしても、夢の世界に浸る心地よさを味わわせてくれたガリアーノの才知は、やはりすごい。

幾重にも重ねたチュール、豊かなフレアー、
花を飾ったブロドリー。平和に満ちた世界が目の前でくり広げられるのをまじかでみるほど、心が高揚することはない。

私が撮影した唯一のグリュオーの写真
カンヌの彼の自宅で
実は、幸運なことに、グリュオーにお会いしたことがあるのです。それは「ディオールの世界」を書いていたときのこと。
ディオールを知っていた人にインタヴューしたひとりが、
グリュオーだったのです。

パリの自宅で立て板に水のごとくに、ディオールとの思い出を語ってくれた彼は、
カンヌでまた語り続けてくれたのです。
地中海を一望できる高台の家。そこで、若々しく語ってくれたグリュオーは、
当時80歳を越えていたはず。
その記憶力とバイタリティーに圧倒されたのを
今回のコレクションを見ながらなつかしく思い出しました。

ノスタルジーに浸ることが出来た今回のコレクションは、
ひときわ感動的。
ありがとうディオール、ありがとうガリアーノ。