2016年11月24日

メトロの駅名は語る 13

Château de Vincennes
シャトー・ド・ヴァンセンヌ (1号線)


1900年に開通した一号線のターミナル、シャトー・ド・ヴァンセンヌは、文字通りシャトーがあった地です。

パリの東にあるヴァンセンヌの森に、12世紀に国王の狩猟の館が造られたのが始まりで、その後、国王の住まいとなり、1270年、聖ルイ王はこのシャトーから十字軍遠征に出かけます。

城壁に囲まれた14世紀のヴァンセンヌ城。

シャトーが大規模に拡大されたのは14世紀。塔がいくつも建築され、城壁が周囲を囲み王の居城にふさわしくなります。

ルイ13世はこのシャトーに長年住み、ルイ14世は「王の館」「王妃の館」を増築させます。塔が重要な囚人の監獄になったのもこのころからでした。

18世紀半ばのヴァンセンヌ城。

1682年、ルイ14世がヴェルサイユ宮殿を居城とし宮廷を移した後、ヴァンセンヌに磁器を作る工房が置かれます。この焼き物工房が後年にセーヴルに移され、セーヴル焼きとなったのです。
 その間も塔は監獄の役目を果たし、サド侯爵、ミラボー、ディドロなどが捕らえられていました。

革命後には武器庫となり、第二次世界大戦中にパリをドイツ支配から解放する激戦があり、その際に大きな痛手を受けました。

ヴァンセンヌ城の主塔(ドンジョン)
このような波乱に富んだ歴史を刻んできたヴァンセンヌ城。その多くが再建されたとはいえ、諸所で昔の面影をしのぶことが出来ます。興味深いのは、革命の犠牲になったルイ16世一家が捕らえられていたタンプル塔が、ナポレオンの命令で取り壊されたとき、ドアのひとつがここに運ばれ主塔(ドンジョン)の一階に付けられいること。重々しく、突き放すように冷たく、異様に黒いドアは、革命の悲劇を語っているようです。
中世でもっとも高い52メートルを誇る主塔からの眺めも素晴らしい。