2016年10月4日

パリの街並みの美しさを保つ努力

17世紀、18世紀の建造物。右半分は汚れたままの状態。
左半分は洗浄後の状態。これが建築当時の姿でした。
パリでは、都市景観を保つ努力を絶え間なくおこなっています。そのひとつは建物の洗浄。何十年どころか何世紀も経っている建造物は、誕生した当時は石灰石の明るい色合いがきれいだったはず。

けれども年月が経つに連れて薄黒くなり、そうした建物ばかりが並び、街全体が暗く沈んだような状態だった時期もあります。

洗浄が終わった側面。
それにしても巨大な館です。

それを改善したのは文化大臣だったアンドレ・マルロー。 彼は優れた作家で、学生時代に「人間の条件」「王道」などを夢中に読んだものです。どちらもいろいろ考えさせられる名作です。

マルローはフランスの歴史的建造物の保護に力を注いだだけでなく、建物を洗浄することによって、建築当時の美しさを取り戻す法律を作ったのです。

石原慎太郎氏は2004年の産経新聞のエッセイで、そのことにふれています。
「ドゴール政権で文化相を務めたアンドレ・マルローは、パリの煤(すす)けた建物の洗いなおしを命じ、加えて街を彩るネオンサインの色を限ったものに規制してしまった。それがパリの印象をしっとりと懐かしいものに保つに役立っている。」

この法律を作ったとき、古さが残っていたほうが歴史的価値が感じられていいという反対意見もあったようですが、やはり、建築当時の姿のほうが何倍も美しい。
豪勢な館のエントランス。もちろん、歴史的建造物に認定されています。
当初は政府高官や有力な貴族が住み、
その後、ルイ13世の時代に枢機卿になり、
ルイ14世の冶世には実質上の宰相になったマザランの手に渡り、
彼はコレクションしていた膨大な数の書物を飾っていました。




このような豪華な館を見るたびに、これでは革命が起きても不思議ではないと思ってしまいます。
この館も革命後には国の所有となり、国立図書館の一部が置かれました。
フランスの歴史を語る貴重なデッサンや絵、書類などを保管していて、私も本を書いているときに何度も足を運びました。
 
まだまだ洗浄と修復は続いているようで、完成したときにはまた中に入って、建築当時の空気に触れたいものです。