2016年3月14日

マリー・アントワネット 絵で辿る生涯 66

コンシエルジュリ―で描かれた
王妃最後の肖像画。

脱出が失敗に終わってから、
王妃の待遇が目に見えて悪化します。

当初は入り口に近い牢屋に入れられていたマリー・アントワネットだったのですが、これでは逃げ出せる危険がありすぎると判断され、一番奥まった牢屋に移されます。

それだけでなく、憲兵が昼夜を問わずに予告もなしに入り、身体検査までし、看守と言葉を交わすことも禁じられます。
親しくなったり同情するのを恐れ、看守の交代が頻繫に繰り返されていたほどです。
庭に面した窓からも、監視が四六時中目を光らせていました。
監視は24時間続いていました。

牢屋には簡素なベッド、マットレス、枕、毛布、籐椅子、テーブルが置かれただけでした。

起床後、王妃はロザリーが買ってきた小さな鏡に向って髪をとかします。輝くばかりのブロンドは、タンプル塔にいる間に白髪となってしまったけれど、それを丁寧に時間をかけてとかす王妃でした。

ボロボロに擦り切れた喪服のまま、彼女はココアとパンの簡単な朝食を済ませ、昼食と夕食にはわずかな肉が出ることもありました。
与えられた本を開いたり、鉄格子がはめられた窓から外を見たり、思いにふけったりして、ひたすら時間が経つのを待ち、祈りを捧げてベッドに入る変化のない日々が続いていました。
牢屋の入り口の厳重な錠前。

散歩も許されない王妃は日に日に体力が落ち、食欲もなくなり、ついにはスープしか口にできない状態に陥ります。

一日中陽が入らず、カビが悪臭を放ち、セーヌ川に近いために湿気が異様に多い牢屋。それが、かつて、金と大理石に象徴されるヴェルサイユ宮殿で、煌びやかなドレスに身を包んでいた王妃の最後の住まいだったのです。
王妃の最後の牢屋。