2016年9月3日

ルネッサンスの時代のシャトー

ノルマンディー地方のルネッサンス様式のシャトー。
レンガを多数使用しているのが印象的。
学芸員が丁寧に案内してくださいました。
ロワール川のほとりには、アンボワーズ、シュノンソー、シャンボールなど、フランスルネッサンス様式のシャトーが点在し日本人にもお馴染みですが、それ以外にもこの時代のシャトーがフランスにはいくつもあります。例えばパリの北のシャンティイ城。これは私が大好きなシャトーです。フォンテーヌブロー城も素晴らしい。

今回訪ずれたのはノルマンディー地方のユー城で、かなり大きいシャトーです。
ルネッサンス期の高位の貴族、ギーズ公が建築させ、彼がロワール川のブロワ城で暗殺されたあと、今日見られるような壮麗な姿にしたのはラ・グランド・マドモワゼル。

このシャトーを完成させ、インテリアなどにも才知を発揮した
ラ・グランド・マドモワゼル。
彼女が生まれたのはパリのルーヴル宮殿。 父は国王ルイ13世の弟という家柄。
父に似て権力にあこがれた彼女はルイ14世との結婚を望んだけれど、大反対にあって無残に崩れてしまう。
1652年、貴族が中心となって起こした国王に対する「フロンドの乱」に参加し、バスティーユ監獄から王の軍隊に向かって発砲命令を出した血気盛んな女性でした。そのために宮廷から追い出されますが、その後再び宮廷に戻ることを許されます。それほど重要な貴族だったのです。

貴族で軍人のローザン公と結婚したもののうまくいかず、すぐに別れ、リュクサンブール宮殿に暮らすようになり、そこで生涯を閉じます。彼女が7年もかけて書いた回顧録は、当時の宮廷生活がわかる貴重なものです。

いくつかシャトーを持っていましたが、彼女が一番気に入っていたのはノルマンディー地方のこのシャトー。使用していた部屋や家具も残っていて、後年に大々的に修復がおこなわれたとはいえ、感慨深いものがあります。
この地方特産のレンガを多く使用した、左右対称の均整の取れた建造物です。

フランスにルネッサンス文化の花を咲かせた国王フラソワ一世。
「ルネッサンスの父」と呼ばれています。

ルネッサンス様式のシャトーは様々な地方にありますが、地域によって、あるいは建築させた人物によって、それぞれ特徴があるので面白い。 イタリアに発祥したルネッサンスがフランスに紹介されなかったら、それ以前の暗い感じのゴシック様式の建物がもっと多かったでしょう。

16世紀に数回イタリア遠征を行い、そこで目にした洗練されたルネッサンス文化に感動した国王フランソワ一世が、フランスに紹介して国中に花咲いたルネッサンス。遠征がもたらした貴重な文化です。

彼がイタリアルネッサンスに魅せられなければ、ダ・ヴィンチをフランスに招待しなかっただろうし、ダ・ヴィンチの名作もルーヴルで観賞することは出来なかった。フランスに来る際にダ・ヴィンチは、「モナ・リザ」「洗礼者聖ヨハネ」「聖アンナと聖母子」を持参し、最期まで身近においていて、現在この3点はルーヴルに展示されているのだから。
それだけでなく、建築、アート、文学、服装、生活様式も、イタリアの大きな影響を受けました。

このように、国王が文芸に対するデリケートな感性を持っていることは、その国の発展や変化にとても重要なのです。